2015年11月20日金曜日

観客が等しく胸を締めつけられる感動のラスト!《タンホイザー》みどころ

 東条碩夫(音楽評論)

 官能の女性ヴェーヌスと、純愛の女性エリーザベト━━この2人の女性に惹かれ、彼女たちの間を揺れ動く詩人騎士のタンホイザー。深層心理的に言えば、これは1人の女性の両側面を象徴する性格ともいえるだろう。そしてタンホイザーは、「清らかな愛をもつ女性」に救われて死んでゆくのだ。これは、ワーグナーの作品にしばしば見られる、「女性による救済」の、ひとつの典型例なのである。

2015年11月19日木曜日

《タンホイザー》現地評のご紹介

レヴァインは、オーケストラから雄大で深く豊かな演奏を引き出した。METは本作に現代屈指のキャスト陣を集結させている。

主役のタンホイザーを演じるヨハン・ボータは高く響き渡る声で、驚くほど軽々とこの難役を歌い上げた。彼の歌声は、若者の憧れの心を表現しつつも、タンホイザーの魂が危機を迎える場面では、その絶望と戸惑いをひしひしと感じさせた。バスのギュンター・グロイスベックは、テューリンゲンの領主でエリーザベトの叔父であるヘルマンを、力強く威厳に満ちた歌声で演じた。さらに本プロダクションでは、エリーザベトを愛する騎士、ヴォルフラム役として、スウェーデンの名バリトン、ペーター・マッテイも登場する。 2013年のMET新演出《パルシファル》のアンフォルタス役で圧倒的な演唱を見せつけたマッテイは、高潔なヴォルフラム役でも同様に、迫真の演唱を披露した。彼の歌声は、無理のない自然な力強さと、甘美な響きを共に兼ね備えていた。これほどまでに優雅な〈夕星の歌〉を聴けるとは、想像だにしない。
 ―ニューヨーク・タイムズ

《タンホイザー》上映時間確定のご案内

11月28日(土)より公開の第3タンホイザー》の上映時間が約4時間32分(休憩2回含む)に確定いたしました。

詳しいタイムスケジュールはこちらです↓

2015年11月6日金曜日

究極の愛が染めたガラスの宮殿〜名作に新風を吹き込んだ若きスターたち 《オテロ》みどころ

 加藤浩子(音楽評論家)

 《オテロ》は、互いを愛しすぎたカップルの悲劇である。そう思えたのは、今回の映像がはじめてだったかもしれない。

 「オペラ王」ジュゼッペ・ヴェルディが晩年に完成させた《オテロ》は、シェイクスピアの悲劇をオペラ化した究極の心理劇だ。将軍オテロは、自分を恨む部下のイヤーゴの奸計にかかり、溺愛する妻デズデーモナが不倫をしていると信じ込む。《オテロ》は優れた演奏で聴くとあっという間に終わってしまうオペラだが、それはすべての音符がドラマと結びつき、最初から最後まで緊張感が続くからだ。追い詰められていくオテロを、たたみかけるように追い、威嚇する音楽。それは奇跡的で、残酷だ。

《オテロ》現地評のご紹介


ソニア・ヨンチェーヴァは一流のキャリアを歩むのは間違いないであろう・・・彼女の官能的な歌声には、素朴な色合いと質感があり歌声のきらめきを見事に調和させている。この作品のハイライトで、壮大に演出された第3幕終わりの合唱の場面では、彼女は特に際立っていた。大勢のキプロスの人々とヴェネツィア大使を前にして、オテロはデズデーモナを罵り、髪を引っ張って地面に平伏させる。打ちひしがれたデズデーモナは、苦渋に満ち訴えかけるようなフレーズで、耐え難い屈辱を表現する。コーラスを突き破り響き渡るヨンチェーヴァの高らかな歌声は、この可憐な愛情深い妻に果敢に抵抗する力があることを示唆しているかのようだ。〈柳の歌〉や〈アヴェ・マリア〉をこれ以上美しく歌えるソプラノが、いま彼女以外にいるだろうか? ニューヨーク・タイムズ

2015年11月4日水曜日

《オテロ》確定上映時間のご案内

11月14日(土)より公開の第2作オテロ》の上映時間が約3時間12分(休憩1回10分含む)に確定いたしました。

詳しいタイムスケジュールはこちらです↓


2015年11月3日火曜日

ワーグナー《タンホイザー》視聴


第3作 ワーグナー《タンホイザー》 ドイツ語                                ※11/11更新
 上映期間:1128日(土)~124日(金)
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:オットー・シェンク
出演:ヨハン・ボータ(タンホイザー)、ペーター・マッテイ(ヴォルフラム)、エヴァ=マリア・ヴェストブルック(エリーザベト)、ミシェル・デ・ヤング(ヴェーヌス)、ギュンター・グロイスベック(ヘルマン)
MET上演日:20151031日 上映時間:4時間20


《タンホイザー》プロモーション映像


第3幕 ペーター・マッテイ<夕星の歌>(リハーサルより)