愛をかけて歌合戦に臨む若き騎士に、未来への希望を託し、自分の恋は諦めて、若者たちのために尽力する靴職人の親方ハンス・ザックス。人間と芸術の理想を、壮麗な音楽で描いたワーグナーの喜劇大作《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の主人公です。
ニュルンベルクの街 |
歌学校が開催された ニュルンベルクの教会 |
日曜日の礼拝のあとなどに、教会の場所を借りて「歌学校」が開催され、マイスタージンガーたちが出席のもと、"マイスター"の資格試験など、歌唱コンテストが行われました。「バール形式」といわれる詩型など、マイスタージンガーの歌詞・韻・旋律の複雑な規則に則って創作された歌を披露し、マイスタージンガーのなかから選ばれた「記録係」がそれらを厳格に採点。持ち点7からの減点方式で、黒板に記録係がチョークで×印を付けていき、減点が7点を超えた場合は「歌い損ね」で失格というような試験でした。
ハンス・ザックスの肖像 |
名演出家オットー・シェンクが手掛けるMETの《マイスタージンガー》は、まさに中世ドイツの古都で育まれた"マイスタージンガー"という豊かな文化と伝統、それを敬愛し生きる市井の人々を生き生きと写実的に描いた名プロダクション。当時のマイスタージンガーたちに想いを馳せながら、ぜひワーグナーの心揺さぶる壮大な音楽の世界に浸ってみてください。