2014年9月30日火曜日

《ニュルンベルクのマイスタージンガー》キャスト変更のお知らせ

《ニュルンベルクのマイスタージンガー》にてハンス・ザックス役で出演予定だったヨハン・ロイターが本役をレパートリーに含めない決断をし降板いたしました。代わりに、ミヒャエル・フォレ(Michael Volle)が代役を務めます。ご了承ください。

ミヒャエル・フォレ


1960年ドイツ生まれ。ドイツを代表する個性派名バリトン。朗々とした深い声の持ち主で、演技力にも定評がある。バイロイト音楽祭でも活躍し、2013年はザルツブルク音楽祭でハンス・ザックス役を歌い絶賛された。2014年《アラベラ》マンドリカ役でMETデビュー。2018-19シーズンにはMET《指環》サイクルでヴォータンを歌う予定。

2014年9月16日火曜日

シェイクスピア生誕450周年記念METトーク開催リポート

915日《ファルスタッフ》上映前に、シェイクスピアの生誕450年を記念し、音楽評論家の加藤浩子さんと、シェイクスピアに関する著書・翻訳を多数手掛けられている東京大学教授・英文学者の河合祥一郎さんをお招きし、オペラとシェイクスピアをテーマにトークショーを開催いたしました。


                                 (加藤浩子さん)   (河合祥一郎さん)

お話の一部をご紹介いたします。(敬称略)

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■現在国立劇場で公演中のファルスタッフの文楽版、河合さんが脚本を手掛けれた『不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)』のお話からスタート。

加藤: 先日観させていたただき、とっても面白かったです。太っちょの道化師的な人間「不破留寿之太夫」が主人公なのですが、桜の花の下で女性を口説いたり、居酒屋でたちまわったり。

河合: 最後には、おそらく文楽史上初めての出来事が起こりますので文楽をお好きな方も、まだ観たことがないという方もぜひご覧いただきたいです。オペラ版はシェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』を主に題材にしていますが、文楽では『ヘンリー4世』のエピソードも入れて作っています。


■ヴェルディはなぜシェイクスピアを敬愛したのか

加藤: ヴェルディはシェイクスピア作品としては今回の《ファルスタッフ》と、《オテロ》、来シーズンのライブビューイングのオープニング作品《マクベス》の3作しか作曲していません。数は少ないですが彼はシェイクスピアをとても敬愛していました。彼はいつも「真実を創造したい」と言っていたのですが、真実を創造できるのはシェイクスピアなのだと言っていました。ヴェルディと同時代の作曲家ワーグナーは、神話をベースにオペラを作曲しましたが、ヴェルディは神話を題材にしませんでした。ヴェルディはイタリア人ですが、イタリア人にとって神話はローマ神話、ギリシャ神話ですが、これまでそれらをもとに既に散々オペラが作曲がされてきたわけで、もう取り上げることは出来ない。そんな時に、神話のような普遍性を感じて取り上げたのがシェイクスピアなんだと思います。

ファルスタッフというキャラクターの魅力

加藤: ファルスタッフは人間性が大きいですし、多面性を持ち、ばかばかしいのに頭が良いところもあって人間としてのスケール感が(通常の)オペラの登場人物とは違う気がします。

河合: ファルスタッフは全然完璧な人じゃない。女には手を出すし、ちゃんと働かないで太っているし、たぶん世の中にいたら大丈夫かなと心配されるような人。そんな人がなぜこんなにも魅力的に描かれるのか。そこにはファルスタッフならではの哲学があるからだと思います。「人間はなぜ生きるのか?」という問いに、あくせく苦労して生きるのとは違って、生きているからには楽しまなきゃという大きなスピリットがあるからなんだと思います。

《ファルスタッフ》のフィナーレ「人間はみな道化。人生はみな冗談。」の意味

加藤: シェイクスピア作品のなかで道化は非常に重要な役割を果たしていて、ヴェルディもその影響を受けていると思います。道化が主人公のオペラ《リゴレット》を作曲中、『リア王』をオペラ化しようと台本まで作っていて、シェイクスピアの道化がヴェルディ作品に色濃く投影されていると思います。

河合: シェイクスピアの原作には「人間はみな道化。人生はみな冗談」という台詞自体は出て来ませんが、ヴェルディが80歳を目前に、一番最後に書いたオペラのフィナーレで、すべてをシェイクスピア的に達観していますよね。シェイクスピア作品では常に、人間は必ず死ぬ、人生は儚い夢だと言っています。悲劇では、正義を求めて頑張って生きている人々を描くのですが、喜劇になると、そう頑張って生きるのは若い人に任せ、歳をとっていつ「お召し」が来てもいいように残された人生を充実させたいという生き方に変わるんですね(笑)。ヴェルディは80歳にして、シェイクスピアのこの達観に至ったと思うのです。だから「人間はみな道化、人生はみな冗談」と言い切ってしまえるのだと。これはシェイクスピアの作品の根底を支える重要なスピリットです。

同じくヴェルディ作曲のシェイクスピア原作オペラ《マクベス》について

加藤:《マクベス》は当時すごくユニークで、イタリアではシェイクスピアの翻訳が出たばかりの時にオペラが作られました。そんなに早い時期からヴェルディは注目していたんです。当時のイタリアオペラだと『ロミオとジュリエット』のような作品が多い中、野心家夫妻の話をとりあげたんですから。ヴェルディは変わった人だったんですね。普通じゃない人間を表現することを好んだんです。また彼はマクベス夫人には美声ではなくしゃがれた声で、容姿も美しくない人にやって欲しいという希望があったようです。役柄に関わらず美しい歌手が美しく歌い上げることが普通だった当時のイタリアオペラでは考えられないことでした。

河合: 新シーズンの《マクベス》の演出家エイドリアン・ノーブルはロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで、演出をずっとやってきている人ですから、舞台としても「本物」の一番良いシェイクスピアの演出でオペラを見られると思います。

最後に、オペラ《ファルスタッフ》のみどころは?

加藤: 舞台がすごくよくできていて洒落ています。演出のロバート・カーセンは楽譜をよく理解し、現代風な演出ですが、ちぐはぐなところがありません。色彩がとっても美しく、一つ一つ美しさが計算された舞台だと思います。ファルスタッフ役のバリトン、A・マエストリはファルスタッフをやらせたら現在トップの歌手ですね。

河合:演劇的な観点でいうと、ファルスタッフという、「どうやって生きるべきか」という大きな人間的な哲学を持っているキャラクターが壮大なスケールで画面いっぱいに広がってきます。そこを楽しんでいただきたいですね。

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◎東劇アンコール2014 今後のシェイクスピア原作オペラの上映
《ファルスタッフ》 926日(金)1900~
《ロメオとジュリエット》 920日(土)1100~, 9月21日(日)1500

その他にもまだまだ上映作品はございますので26日(金)の最終日までどうぞお楽しみください。

2014年9月2日火曜日

《フィガロの結婚》キャスト変更のお知らせ

   《フィガロの結婚》にて伯爵夫人役で出演予定だったマリーナ・ポプラフスカヤが健康上の理由で、降板となりました。代わりに、アマンダ・マジェスキーAmanda Majeski が代役を務めます。ご了承ください。

アマンダ・マジェスキー(ソプラノ)
(C) Dario Acosta

新シーズンの後半で《フィガロの結婚》同役を歌う予定だったアマンダ・マジェスキーは、今回の代役でMETデビューをオープニングナイトで飾ることになる。同役をシカゴ・リリック・オペラやグラインドボーン音楽祭などで歌い好評を博し、その他、《ドン・ジョヴァンニ》エルヴィーラ役や《皇帝ティートの慈悲》ヴィッテリア役など、モーツァルトの諸役で高い評価を得ている。今後のさらなる飛躍が期待される注目の若きソプラノ。アメリカ・イリノイ州出身。