2013年4月22日月曜日

《ジュリアス・シーザー》万歳!現地メディア評のご紹介


今シーズンのライブビューイング最後を飾る《ジュリアス・シーザー》が現地METで4月5日に初日を迎えました。新演出と歌手たちのパフォーマンスに観客は拍手喝采!5月18日(土)より日本の映画館でも興奮の渦を巻き起こすに違いない話題作。ぜひお見逃しなく!

シーザー万歳!過去の演出を凌駕する究極のプロダクション
――New York Post

シリアスとコミカル、ロマンスとアドベンチャーが奇抜にブレンドされたオペラ。デイヴィッド・マクヴィカーの演出はそれに負けないくらい大胆。初日、観客は総立ちで、熱狂的な大喝采を送った――The New York Times

お楽しみと驚きに満ちた舞台……大喝采が巻き起こった――Associated Press

見事な超絶技巧――The Huffington Post

音楽的にも演劇的にも至福の喜びを与えてくれる舞台デイヴィッド・ダニエルズナタリー・デセイをはじめとする一流の歌手たち…ダニエルズはこの役の名手であることを舞台で証明し…デセイも驚異的に素晴らしい――The Wall Street Journal


ダニエルズは出色の出来――The New York Times

デセイはまさに輝かしいクレオパトラそのものを見事に演じた。優れた演技力をもつ最高のソプラノ歌手の一人として君臨し続け、誘惑する女から、絶望的な敗北者、歓喜に満ちた勝利者まで、その演技の幅は留まることを知らない。そして、ダンスも完璧だ――The Huffington Post

ウイットに溢れ、想像力に富んだ舞台。4つ星  ――Bloomberg

もしまだ誰かヘンデルのオペラが心躍る舞台になり得るのか疑念を抱いているならば、今回のMETとびきりの新演出がその疑念を払拭するに違いない――The Huffington Post

2013年4月19日金曜日

METバックステージツアー付き観劇チケット 当選者 現地レポート②

1.メトロポリタン歌劇場【MET】の印象

 建物はモダンでシンプルですが、ロビーや劇場内は重厚でクラシックでした。赤い絨毯と特徴的なシャンデリアで飾られ、そこここに歴史を感じさせる資料が飾ってあります。音楽好きの若者から常連と思われるセレブリティな雰囲気のマダム、美女を連れた素敵なおじ様などで満員でした。
 開演前にLe Grand Tier Restaurantに行きました。ここはライブビューイングのパンフレット(P.58)で見て是非行ってみたいと予約をしたのです。オペラの前にふさわしい洗練された軽めのお食事とワインが揃っていました。このレストランは当日のオペラの入場券を持っている人だけが、開演2時間前の開店より利用できます。お洒落をして楽しそうに歓談するグループの方もいらっしゃるようでした。もちろん私たちも!

2.バックステージツアー

 いかに多くのプロフェッショナルたちが、良いオペラを作ろうと力を合わせているのかが解り、METの素晴らしさを実感しました。複雑なMETの裏側を縦横に歩き回り、舞台装置、練習室、楽屋、合唱隊の部屋、バレエスタッフの部屋、衣装、大道具・小道具のアトリエ、衣装のアトリエ、カツラ専用の製作・保管部屋などを見せていただきながら説明を受けました。ライブビューイングで垣間見たのと同じ場所も歩き、感激も一入です。"maestro, to the pit please" を発信するディレクターコーナーもばっちり見てきました。
 驚いたのはやはり舞台です。中央舞台と同じ広さの舞台が左右と後ろ、地下にあり、さらに舞台は回り舞台があり、前後幾筋もに分割されていて部分的に奈落に上げ下げ出来る舞台があり、すごい規模です。ライブビューイングでインタビューを受けていた舞台監督の方も練習室あたりでお見かけし、「おおっ」と思いました。
 平日の昼は別の演目のリハーサルのために毎回舞台装置を設置し、片付け、また夜の公演のために別の演目の舞台を整えるのだそうです。そのためMET24時間2交代で眠らず働き続けているそうです。毎晩別の演目のオペラを上演するだけでも脅威的だと思っていたのに、さらにその間にもう一舞台準備しているなんて想像を絶する事でした。そのおかげで短期滞在者も複数演目を楽しめるわけで、ありがたいことです。

3.《椿姫》の感想 

このメンバーでMET初演だった公演のせいか、指揮者も出演者も、また観客までも皆緊張に包まれてものすごく臨場感のあるステージでした。ダムラウの一幕のパワーは二、三幕で深い表現へと変わり、素晴らしかったです。スター歌手の圧倒的な力を感じました。ストーリーの中の悲しい場面はもちろん、なんでもない場面でも気づいたら涙が出ていたというようなすさまじい体験でした。ドミンゴの存在感は圧巻でした。ジェルモンが登場したとたん大拍手がおこりました。優しそうなジェルモンで、新しいジェルモン像でした。スターオーラに加え、声にも輝きがあり、生きているうちにこの肉声を聞けるなんて幸せでした。ドミンゴと同時代を生きていてよかったです。

4.《オテロ》の感想

 昼間のバックステージツアーで間近で見た素晴らしい舞台装置が使われた、ダイナミックな演出の公演を楽しみました。アラン・アルタノグルの指揮は安定した印象を受けました。「このクオリティーがMETの標準です」というようなMETの底力を見た思いです。四幕は特に良く、深く印象に残りました。イヤーゴ役はハンプソンではなくヴラトーニャで、MET初舞台だったようですが、声量も歌も良かったです。開演前のシャンデリアが上がっていく瞬間も体感できました。今シーズンのライブビューイングの≪オテロ≫とは、歌手の個性がとても違うキャスティングでした。同じ演出でこれほど違いがあるのにも驚き、今一度ライブビューイングのを見直してみたい気もしました。

5.METライブビューイング」ならではの魅力

 幕間のインタビューが大変魅力的です。歌手の思いや素顔を知ることが出来るのはライブビューイングならではです。演出家の話を聞きたい凝った新演出の時には演出家の、衣装が素晴らしいなと思った時には衣装室のスタッフの、といった、インタビューの選択もいつも的を射たもので、オペラ製作をリアルに実感できます。
 ヨーロッパの歌劇場とは違った魅力がMETにはあるのを、今回訪れて感じました。例えば、「世界一のオペラを上演するぞ!挑戦し続けるぞ!」という意気込みのようなものでしょうか。ニューヨークという街自体にものすごいパワーがありました。新しいセンス、新しい芸術の発信地、今の時代にあった最先端の芸術はここから生まれる、といったパワーです。一度見た人を確実にオペラファンに引きずりこんでしまうほどの魅力です。歌手たちが皆、METを目指してくるのもわかります。とても特別なところでした。
 そのMETで、ライブビューイングの時にはさらにスペシャル!出演歌手たちの豪華キャスティングも、ライブ当日の気合の入りようも、もしかしたらライブビューイングならではの魅力といえるのかもしれません。スター歌手たちも通常の公演よりも確実にアドレナリンが倍増している気がします。
 
6.その他ご感想

 私たちは今回、各々結婚して子育てしながら仕事をしている姉妹で参加させていただきました。子供と仕事があれば実質自分の時間はありません。その中で「ライブビューイングだけはお願い」と夫に子供を頼み、終わると走ってまた子供のところに戻ります。このつかの間の自由時間の喜びを糧に残りの毎日を過ごすという暮らしです。そんな私たちにとって、「ニューヨークに旅して劇場でオペラを観る」というのは到底かなうことが望めない夢でしかありませんでした。でも「当選」という奇跡のおかげで周りの皆が協力してくれ、今回の夢のような旅&オペラ観劇が実現しました。これからも一生オペラ好きでいます。

METバックステージツアー付き観劇チケット 当選者 現地レポート①

2012-13シーズンのキャンペーン、「ニューヨークMETバックステージツアー付き観劇チケット&ホテル宿泊券プレゼント」のご当選者2組4名様が先日、無事にご帰国なさいました。現地からの興奮のレポートをお写真と合わせてご紹介いたします!

1.メトロポリタン歌劇場【MET】の印象

タクシーから下車しリンカーンセンター前に降り立った時、目の前に見えるMETの姿に感動しました。夕暮れ前のMETも凛として美しい姿でしたが、夕闇が迫る頃正面のシャンデリアが灯ると、METは一層華やぎを増してとても優美に見えました。「この歌劇場で今晩オペラをみる」と思うと何ともいえない誇らしげな気持ちになり、ワクワクが胸一杯に込み上げてきました。METの中に一歩中に足を踏み入れると、そこはまさに夢のような世界。思い思いに装った品の良い紳士淑女と、キラキラと輝くシャンデリアが見事に調和して、なんとも高揚した気持ちにさせてくれました。グラスシャンパーニュを片手に談笑するもよし、館内の美術品ともいえる数々の展示品に目を奪われるもよし、開演前の時間もとても有意義に過ごすことができました。

2.バックステージツアー

本当に参加させて頂けて心の底から良かった、と思います。いつもライブビューイングで見ている世界に自分がいると思うと、本当に夢のようでした。トップスターたちが使用するDressing Room(楽屋)の中も見ることができ、ライブビューイングでは、いつもここでインタビューをしている!と感動しました。また想像を超える舞台装置の裏側や、外からは想像できないような歌劇場内部の各種工房(大道具・小道具・衣装・ カツラに至るまで歌劇場内部で作っているのです!)も間近に見ることが出来て、本当に驚きました。本場のMETでオペラを見れただけでも感涙ものでしたが、バックステージを合わせて拝見させて頂けたことで感動が2倍・3倍にもなりました!ちなみに、見学当日は公開間近の《ジュリアス・シーザー》のリハーサル関係の小道具・大道具・衣装等を目の前で見ることができました。
  
3.《椿姫》の感想

Pドミンゴさんは若かりし頃に歌ったアルフレード役(テノール)ではなく、父ジェルモン役(バリトン)での出演でした。第2幕のヴィオレッタ(ソプラノ)との二重奏と演技は説得力もあり、まだオペラファンになって間もない私にとっては、生のドミンゴさんの歌唱を聞けただけでも感動でした。Dダムラウさんも初ヴィオレッタとのことでしたが、今期もう一つの出演作である《リゴレット》のジルダとはまた違った迫力がありました。歌は素晴らしかったです。デッカー演出の椿姫は一度生で見てみたかったので、とても満足でした。

4.《オテロ》の感想

前日の現代的でミニマムな空間で演じられた《椿姫》とは異なり、正統派でクラシカルかつ迫力のある演出でこちらも満足度の高い演目でした。クーラさんも一度見てみたかったテノールだったので、とても自信に満ち溢れた歌と演技で見事でした。第一幕冒頭の「歓べ!」もよく声が出ていて、素晴らしかったです。また個人的には、「オテロ」はやっぱりイアーゴ(バリトン)があってこそ引き立つものと思っています。今作イアーゴDebutMarco Vratognaも本当にイキイキしていました。第一幕「乾杯の歌」、第二幕「クレド」ともにハリのある素晴らしい声を聞かせてくれました。今後注目したいと思いました。ストヤノヴァの「柳の歌」「アヴェマリア」もぐっと来ました。

2013年4月12日金曜日

ヘンデル《ジュリアス・シーザー》視聴 4/13更新

12作 ヘンデル《ジュリアス・シーザー》 新演出
上映期間:518日(土)~524日(金)
指揮:ハリー・ビケット    演出:デイヴィッド・マクヴィカー
出演:デイヴィッド・ダニエルズ(シーザー)、ナタリー・デセイ(クレオパトラ)、アリス・クート(セスト)、パトリシア・バードン(コルネ―リア)、クリストフ・デュモー(トロメーオ)
MET上演日:2013427日 上映時間:4時間43分(休憩2回)

第一幕 ナタリー・デセイ


第二幕 ナタリー・デセイ


メイキング映像 デイヴィッド・マクヴィカーインタビュー

2013年4月1日月曜日

永遠の悲恋物語《フランチェスカ・ダ・リミニ》現地レポート


永遠の悲恋物語、フランチェスカとパオロ

池原麻里子(ジャーナリスト)

フランチェスカ・ダ・リミニ(またはダ・ポレンタ)は、13世紀イタリアに実在した女性でラヴェンナ領主ポレンタ家の出身。父は政敵マラテスタ家との争いを終わらせるべく、娘をリミニ領主ジョヴァンニ・ポレンタに嫁がせた。フランチェスカはジョヴァンニの弟パオロ(既婚者)と恋に陥り、10年以上も恋愛関係を続けた。が、ジョヴァンニがフランチェスカの寝室にいた両人を殺すことで、不倫に終止符を打つ。

フランチェスカとパオロの悲恋は、多くの芸術作品の題材として取り上げられて来た。ダンテが名作「神曲」で、フランチェスカがクレオパトラやトロイ戦争の原因となったヘレナらとともに、愛欲者の地獄で永遠に苦しむ姿を描いたのが最初。その後はアングルの絵画、ロダンの彫刻「接吻」(原題は「フランチェスカ・ダ・リミニ」)、チャイコフスキーの幻想曲、ラフマニノフのオペラなどが特に有名だ。1901年にはイタリアの作家ガブリエーレ・ダヌンツィオ(1863-1938)が、ダンテのたった38行の詩を劇化した。