2013年1月18日金曜日

《トロイアの人々》で鮮烈なMETデビューを飾った新星テノール


超大作《トロイアの人々》のアエネアス役で急遽の代役に抜擢され、鮮烈なMETデビューを飾ったテノールのブライアン・イーメル。パワフルかつ情熱的な演唱で、大喝采を浴びた感動的なデビュー公演の様子を伝えた現地ニューヨークタイムズの記事をご紹介します♪  彼の力強く輝かしい高音は本当に圧倒的です!!一聴の価値あり!

クリスマスの翌日にベールがはがされたテノール
ニューヨークタイムズ 2012/12/27  by Anthony Tommasini

アメリカ人テノールのブライアン・イーメルが、メトロポリタン歌劇場でのベルリオーズ《トロイアの人々》の公演にて、カーテンコールに姿を現したとき、すべてのキャストが舞台上に並び、観客と一緒になって、長い拍手喝采で彼を称えた。歌手たちがこのような行動をとったのは、この若き同僚が、急な依頼でアエネアスという大役でMETデビューを飾ったことへの歓迎の賛辞だけではないようだ。キャスト陣、特に、今回も壮麗な歌声で魅惑的なディドー役を演じた輝かしいメゾソプラノのスーザン・グラハムは、イーメルがこの至難の大作フランス・オペラの中心をなす英雄を、情熱をこめて堂々と歌い上げ、公演を窮地から大成功へ導いてくれたことに心から感謝している様子だった。(中略)

イーメルの歌声は全体として、仄暗い色合いで逞しく、速いヴィブラートと素朴な質感があり、声域すべてに渡って安定している。最終幕、アエネアスが愛するディドーを捨て、ローマを建国する自らの宿命を成就しようと決意する難関の場面では、イーメルは疲れを見せるどころか、激しいほど自由に歌い上げ、力強い高音で聴かせた。しかし、彼が最も輝きを放っていたのは、柔らかい高音で歌うグラハムとの掛け合いだった。頼もしいアエネアスをそばに、グラハムはさらに抒情豊かに、とろけるような歌声を響かせていた。(中略)

今日のデビュー公演は、実質的には、イーメルにとって初の舞台稽古のようなものであり、15日(土)のライブビューイングで最終日を迎える公演期間を通して、さらに見事に開花するであろう。


ブライアン・イーメル プロフィール:
2012年6月、英国ロイヤルオペラによる新演出《トロイアの人々》アエネアス役を演じる。また同年12月、同歌劇場にて新演出マイアベーヤ《悪魔のロベール》題名役、今シーズン初めには同歌劇場初演のドヴォルザーク《ルサルカ》王子役で出演。最近ではヒューストン・グランドオペラでヴェルディ《椿姫》のアルフレード役、リリック・オペラハウスのグノー《ファウスト》題名役などで活躍している。今回がMETデビューとなる33才の期待のテノール。






写真上(C) Ken Howard/Metropolitan Opera 
写真下(C) Dario Acosta